商標登録出願は、特許庁に対して願書を提出するところから始まりますが、無駄な費用と労力を費やさないためにも、自社の出願前に第三者が、自社の出願しようとする商品・役務について出願使用とする商標と同一又は類似の商標が出願または登録されていないかを確認しておくことが一番大切です。また、商標法では、たとえ他者の出願や登録が存在しない場合でも、登録できない事由(3条、4条等)が定められており、それらに該当する場合は、登録を受けることができないため、出願前の時点でそういった点も見極めておく必要があります。

 弊所で出願の依頼を受ける際は、依頼人の事業活動の内容をヒアリングし、しっかり把握した上で調査を行い(①)、ある程度登録可否などを想定した上で、適切な形で出願の代理を行っています。指定商品・指定役務の選定については、別ページでご説明しますが、具体的な手続の流れとしては、以下のとおりとなります。 

図1111 

 まず、特許庁に出願を行う(②)ことで、出願日が確定し、出願番号が付与されます。その後、しばらくした後、その出願内容が公開されます。特許庁においては、願書が体をなしてるかなど形式的な審査を行い(方式審査といいます)、問題がなければ、審査官により実際の内容の審査(③)が始まります(これを、実体審査といいます)。

 出願内容が、登録要件を満たし、拒絶理由を発見しなかった場合、審査官は登録をする旨の査定をします。一方、上記のとおり、拒絶理由が発見された場合は、拒絶理由通知が出願人のもとへ送られてきます。出願人は、それに対して意見書や補正書を提出して、反論する機会が設けられます(拒絶理由通知発送の日から40日以内)。当該反論が認められれば、登録査定がでることになります。また、反論に対し、審査官がそれでも拒絶理由が解消されていないと判断した場合には、拒絶査定となってしまいます。なお、拒絶査定に対して不服がある場合には、拒絶査定不服審判を特許庁に対し提起することができます。(詳細は、別途)仮に左記審判でも、拒絶をすべき旨の審決が出てしまった場合には、今度は裁判所に対して、審決が誤りである旨の審決取消訴訟を提起するという手段もあります。

 最終的に登録査定が出た場合(④)、登録査定謄本送達日から30日以内に登録料納付手続を行うことで初めて商標が特許庁の原簿に登録され、権利が発生します。(基本的には10年分を一括して納付しますが5年毎に分納することも可能です。ただし、分納の場合は、費用が割高になってしまいます。)登録されると間もなく、商標公報が発行されます。

 また、商標は存続期間が登録から10年ですが、特許や他の知的財産権とは違い10年毎に更新することで永久的に権利を維持することができます(⑤)。商標の更新登録は、存続期間満了前6カ月から存続期間満了前までに行いますが、存続期間が満了してしまった場合でも、一定要件下で更新できる場合があります。なお、一般的に、代理人は登録後から代理権がなくなってしまうことから、(また、10年後は当時の代理人とは連絡をとっていないというケースも多いことから)更新期限の連絡がこないでうっかり期限を徒過してしまったという話をよく聞きます。そうならないためにも、自社で期限管理をしっかり行っておくことが大切かと思われます。