海外(近年では特に中国)からブランド品を輸入しようとすると、税関において輸入を止められることがあります。税関が輸入を止めたのは、当該輸入商品が関税法違反の疑いがあるから、すなわち、商標権侵害物品の可能性があるからということです。その場合には税関から認定手続開始通知書が届きます。このような通知は相当数出されており、当事務所でもご相談に来られる方が所持しているケースが多いです。

 税関の通知は、刑事事件への端緒(きっかけ)となります。通知を受け取られ、弁護士への相談をお考えの方は以下も読んでいただければ幸いです。

通知が来た方へ

  ここを読まれている方は右のような開始通知(財務省関税局のHPより引用)が届いた方が多いかと思います。この通知については弁護士への相談、迅速な対応が必要です、相当な確率で当該商品は偽ブランド品だと考えられます。異議を述べることもできますが、ほとんどの方はしないでしょう。

 これが複数回届いて、それをずっと放置している方についてはかなり状況が悪いです。放置している方には認定通知書や没収通知書を受けているはずです。税関からの通知を放置して輸入を繰り返している場合には、税関による関税法違反(商標権侵害物品の輸入)に関する捜査が行われ、最終的に検察庁へ関税法違反の罪で告発されることになります。関税法違反については最初税関が捜査します。この際、警察とも連絡を取り合っていますので、警察は警察で商標法違反の疑いで並行して捜査をします。税関が捜査の端緒(捜査のきっかけ)になる場合には、税関捜査による関税法違反だけでなく警察捜査による商標法違反や著作権法違反なども付加されることになります。商品の送付先や宛先を変更したりして、税関の目をかいくぐって違法な商標法違反の商品を繰り返し輸入しようとする方もいますが、警察や税関の捜査ではそのつながりも把握しています。送付先や宛先を変えるなどの小手先での対応は最終的には発覚しますし、繰り返し行うことは罪が重くなります。どのような荷物がどこの空港からどの便で日本に入ってきているかについて税関は全て把握しています。

 税関の通知が2,3回無視すれば税関が動き出していると考えたほうがよいと思います。そのような意味でこの通知が来たらかなり危険な状況にある(商標法違反や関税法違反の刑事事件に発展している可能性がある)と思ってください。早期に弁護士へ相談し、対応すれば刑事事件化することなく終了することもありますし、仮に刑事事件となった場合でも、既に弁護士へ相談している場合には、警察や税関の動きに対して動じることなく対応することもできるようになります。

通知から派生する弁護士からの警告

 弁護士から商標権侵害物品を輸入していることを示す警告書を受領している方もいるかもしれません。税関とブランド会社が連携して被害撲滅に動いていることもあり、ブランド会社が弁護士に依頼して、商標権侵害警告通知を発することもあります。放置すると刑事事件や民事事件にも発展することもありますので、税関通知を受け、さらに、このような弁護士からの通知を受けた方は早期に弁護士へ相談されたほうがよいかと思います。

財務省による輸入差止データ

  財務省からH26年~H29年の知的財産権の水際措置、すなわち、輸入差止めに関するデータが公開されています。詳細は下記の記事及びそれにリンクされているデータのとおりですので参考までにご覧ください。
 http://www.mof.go.jp/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/index.html

 毎年、かなりの数の知的財産権侵害品の差止が行われており商標権に関するものが大部分を占め、最近は中国からの輸入品がほとんどです。その対象もバッグや衣類、そして最近では携帯電話附属品としてのスマホケースなどがかなりの数が差止められています。医薬品も多かったみたいですが、これはバイアグラ等の偽造品がかなりの数が輸入されているようです。また特許権に基づいてインクカートリッジ、意匠権に基づいてイヤホン等も差止め対象となっているようです。当事務所への弁護士への相談は、商標法違反事件の相談が圧倒的に多く、その傾向としては、バッグ、衣類、スマホケースに関するものが多いです。

 また、差止めの際に行われる認定手続の大部分は商標権者へ意見照会しない形の簡易手続で行われることが圧倒的多数です。そのうち10件に1件くらいはその中で異議(偽造品とは思っていない等)が申し立てられているようです。記事を見ると、衣服のタグを二重にしておき上のタグを取るとその下から有名ブランドのロゴが入ったタグが出てくる、シールを貼ってブランドのロゴを隠している等、商標法違反の物品の輸入が巧妙化しているものもあるようです。

 刑事事件に発展する告訴については、税関が動いた件数自体は少ないですが、実際、税関が動かなくても商標権者側が動き、刑事事件化するケースも多数あります。税関が動いた事件、商標権者側が動いた事件、いずれも当事務所の弁護士への相談が引き続き寄せられています。なお、インターネットを介した小売販売は最近では簡単に仮想店舗を持つことができ沢山の方が参入していますが、商品の並行輸入に関しては、商標権侵害の有無について相当慎重な検討が求められます。また、偽物を輸入して、それを本物として販売すれば、輸入部分で関税法違反、所持で商標法違反、販売で商標法違反さらには詐欺罪となり得ます。

 外国からの商品の輸入については、商標法違反に問われるケースが多々あるという点に十分に留意し、もし、商標法違反や関税法違反(商標権侵害物品の輸入)等で税関から通知を受けたようなケースでは、早期に弁護士への相談をなされたほうがよいです。

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