商標権侵害警告が来た際の対応

a0002_003094弁護士からの商標権侵害の警告書の内容としては、第一段階として、商標の使用の停止、在庫の廃棄(または一旦保持)を求め、その回答(対応)期間を区切り、返答や対応なき場合には法的措置を取る旨を付言しているものがほとんどです。その上で、損害賠償額算定のために販売数量、販売額、仕入額、仕入先等を示す資料等の開示を求めてくることもよくあります。さらにすでに販売した商品の回収を求めるものもあります。

このような書類を受け取れば、商標権侵害に該当するか否か、正当化する理由があるかについて検討し、商標権侵害であることを争う場合にはその理由を記載して回答することが通常であり、また、商標権侵害であることを争えない場合には、事件を収束させる方向で進めていくことになります。

以下、警告内容の検討、各種正当化理由、そして警告書への回答について説明させていただきます。

商標権侵害の警告内容の検討

商標権侵害の警告書への一般的な対応としては、形式的な点、すなわち商標権の存在や権利者を確認をした上で、商標権侵害しているのか否かについて検討することはまず最初に行います。警告書には商標の登録番号が記載されていますので、その権利がどのような内容なのかを確認します。

相手方の商標権の確認する方法としては特許庁が提供している特許情報プラットホーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage)を利用することができます。この特許情報プラットホームにて、「商標」を選択した上で、検索画面にて登録番号を入れれば登録されている情報が出てきます。そこには、登録商標がどのようなものか、登録されている商品・役務(指定商品・指定役務)がどのようなものか、ということが記載されています。

商標権侵害か否かは、簡単に言うと、自ら使用している商標と登録商標が同一又は類似(似ている)、かつ、自ら使用している商品・役務と登録されている商品・役務が同一又は類似している、という場合です。同一の場合には自分で判断できますが類似の場合には微妙な判断が迫られることになります。類否の判断が微妙なものについては弁護士や弁理士へ確認された上で進めたほうが安全です。

また、形式的に登録商標と同じものを使用しているが、説明文として使用されているような場合やURL中に使用しているような場合には、商標権侵害に該当しないということもあります(商標的使用)。その他、自らのほうが先に使用しているような場合には、一定の要件を満たせば権利侵害を逃れることができる場合(先使用権)もありますし、相手方の商標が無効理由を含んでいる場合もあり、このような場合には、これが裁判所で認められれば引き続き使用することが可能となります。さらに、商品を外国から輸入しているような場合で、当該商品がいわゆる真正商品の並行輸入品の場合には適法となることもあります。

微妙なケースでは特に慎重な対応が求められまが、警告書の回答期限は法的措置とセットになっているため、弁護士へご相談に来られる方の大半の方が気にされているかと思います。商標権侵害の有無、特に商標の類否や抗弁(先使用権等)等の判断は慎重に行う必要がありますので、ある程度時間の確保することも必要となります。

以下、さらに正当化理由としてあげられる先使用権と並行輸入の抗弁について説明させていただきます。

先使用権

原告である商標権者の商標権侵害の主張に対しては、被告となった側は商標権の侵害行為を否定するほか、商標権侵害行為に該当したとしても、自らのほうが先に使用しているようなケースで一定要件を満たす場合、正当理由があるとして商標権侵害行為は成立しないと抗弁を主張することができます。これは先使用権と呼ばれるものです。

先使用権とは、

① 不正競争の目的でなく

② 出願前から日本国内において

③ 商標権者の商標と同一又は類似の商標を、商標権者の指定商品役務と同一又は類似の商品(役務)に使用し、

④ 使用商標が出願時に取引者・需要者の間で広く認識されている

場合に限り、そのまま継続して使用することができるというものです。先使用権は、単に相手方(商標権者)の出願前から自社で使用しているだけで認められるわけではなく、商標権者の登録商標の出願時点で周知に なっている必要があります。既得権益の保護等の観点から認められているものです。

もっとも、先使用権があることの立証(証明)については、商標権侵害を主張されている側が行う必要があり、特に④使用商標が出願時に取引者・需要者の間で広く認識されている、いわゆる周知性の立証はそのハードルが高いものです。指定商品役務によって、その範囲や程度が異なりますし、具体的にどの程度の資料が必要なのか等、先使用権が認められるか否かについて判断をするのは難しく、弁護士を交えた当事者間の警告でのやり取りでは水掛け論となることが多く、訴訟前の解決を困難とすることもあります。最終的な結論を知るためには、弁護士を代理人とする等して、しっかり立証して商標権侵害訴訟等の裁判で決着するほかありません。

なお仮に先使用権が認められたとしても、継続して抵触する範囲での商標の使用が許される権利に過ぎませんので、あまり自由度は高くありません。そのため、先使用権が認められるのであれば、相手方の登録商標に4条1項10号の無効理由があるとして、無効審判を請求し対世的に無効とすることや、商標権侵害訴訟において無効の抗弁の提出を検討したほうがよいかもしれません。

また、商標権者側から商標権に基づく権利行使されたときに備えて、先使用の事実を証明し得るものを常日頃から集めておくことも予防法務として重要ですが、そもそも、このような認められにくいものに頼ること自体、予防法務活動としては失敗です。自社の使用する商標や将来使用意思のある商標は、すぐに弁護士や弁理士に出願を依頼して、商標登録するのが基本です。

真正商品の並行輸入

原告である商標権者の商標権侵害の主張に対しては、被告となった側は商標権の侵害行為を否定するほか、商標権侵害行為に形式的に該当したとしても、当該商品は適法な並行輸入品であるから商標権侵害行為は成立しないと抗弁を主張することができます。実際、並行輸入業者及びその販売業者に対して真正商品を製造販売するブランド会社が警告書を受けるケースは相当数あります。

並行輸入品が商標権侵害とならず適法となるか否かについては従前下級審にて多数のケースで争われてきました。その後、ようやく最高裁での判断が出て、一定の要件下にて違法性が阻却され適法となるとされました。具体的には、

① 当該商標(並行輸入品の商標)が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり(いわゆる真正商品であること)

② 当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより、当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって(出所(主体)の同一性)

③ 我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから、当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される(品質の同一性)

場合には適法となることが示されました。商標が有する出所表示機能が害され(①②要件)、商標権者の品質管理機能が害されれば(③要件)、商標権侵害となるということです。ただ、これだけではよくわかりません。特に並行輸入品販売業者の方で問題となるのは主に①③要件ですので、具体例を挙げて説明します。

①要件においては、販売している商品が真正商品であることが必要となります。商標権者から何らの許諾を得ていない者が勝手に商標を付して製造された物、いわゆる偽物(コピー品)の場合には当然商標権侵害となります。また、ある商品(たとえばバッグ)についてのみ製造販売する許諾を得ている者が他の商品(たとえばアクセサリー)に勝手に商標を付して製造されたものについてもアクセサリーの製造販売については真正商品とはなりません。

③要件の品質の同一性というのは、品質について実質的に差異がないことが要件となっております。ただ、商標権者の品質の管理が及ばないものであれば、実際に品質にそれほど差がなくても同要件は満たさず商標権侵害となると考えられます。なお、前記の最高裁では、下請禁止の約束があったにもかかわらず、かつ、製造許諾されていない国において下請会社によって製造された物の販売等が商標権侵害となるかが争われ、判決では③要件を満たさず商標権侵害としました。

この最高裁により、並行輸入に関する統一的な見解がでたともいえますが、この判決で示されているのはあくまで要件であり、自社の並行輸入品が当該要件に該当するかを判断する必要があります。最近は中国工場における製造した物の取り扱いに関する相談が多数寄せられています。実際、並行輸入の態様によって商標権侵害となる場合もありますし、ならない場合もありますので、弁護士が事情をしっかりお聞きした上でどのように対応すべきま判断いたします。

警告書への対応

上記検討により、商標権侵害していないと判断した場合には、その旨回答することになりますし、侵害していると判断した場合には、円満解決の着地点を考えることが必要となります。

侵害していないと判断したケースでは、なぜ侵害しないのかについて文書で回答するのが適切です。相手方を納得させるだめの主張をする必要があります。回答を出すとさらに相手方から反論がくるケースもありますので、その場合、必要に応じて再反論したりしながら着地点があるのかを見極めていくことが必要です。また、侵害していると判断したような場合では、基本的には相手方の要求すべてに応じる必要まではありませんが、可能な範囲で回答することが早期円満解決に資することになることが多いです。

相手方の警告書には、弁護士名義のものもありますし、弁護士名義ではなく会社名義の内容証明や普通郵便、メールでの警告、電話での警告等、商標権侵害の警告の形はさまざまなものがあります。これに対しては、どのように回答するかは慎重な判断が必要となります。商標権侵害の事実が存在するのか、すなわち商標や商品が同一類似なのか、また、使用について正当な理由がないのか等をしっかり検討する必要があります。この際、弁護士に相談することが多いかと思いますが、弁護士名義で回答するのか、会社名義で回答するにかはケースバイケースとなります。弁護士が関与すると紛争が顕在化することもあります。会社名義の場合のほうが円満に和解できる場合もあります。この点については事案によって異なりますので、弁護士相談の際に適切に助言させていただいております。

商標権侵害の警告を受けた場合、まずは弁護士への相談が大切かと思います。

なお、最終的に裁判外の任意の交渉において解決できなかった場合には、商標権者側は訴訟提起などをしてくることになりますので、それに対しては対応することが必要となります(訴訟を放置すると負け判決となります。)。明らかに商標権侵害しているケースなどでは、早期かつ誠実な対応が必要となります。警告を放置すると刑事事件へと発展することもありますので決して放置はしないようにしてください。

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