商標権侵害で警告したい

GUM02_PH03120商標権を侵害している者を発見した場合の対応としては、商標権侵害で警告することを考えることになります。商標権侵害の警告の目的は様々で損害賠償請求やライセンス目的というのもあるかもしれませんが、第一義的には商標の使用を停止してもらうことです。弁護士名義の警告を送るのか、弁護士名義ではなく会社名義の警告を送るのか、これはケースバイケースです。警告前に商標や商品役務の類否は勿論、相手方からの抗弁の有無(正当理由の有無)はしっかり検討しておかないと返り討ちにあうことにもなりますし、警告文面によって相手方の態度も変わりますので、商標権侵害の警告はその内容を含め慎重に検討した上で行う必要があります。

実際、相手方がいるわけですから、警告相手方が警告書を受け取った後、どのような行動にでるのか(無視する会社もありますし、きっちり反論してくる会社もあります)という点も十分に予想した上で行動する必要もあります。なお、商標権侵害の警告書は、メールや普通郵便などで送る場合もありますが一般的には内容証明郵便等で送るのが普通です。勿論、警告の前提として自らが権利者であり権利が存続していることは当然の前提です。

商標権侵害警告書の記載内容

商標権侵害の警告書の記載内容として、基本的な文章の流れとしては、自らが所有する商標権を提示(権利者、番号、商標名、指定商品等)した上で、相手方の使用行為を特定し、当該行為が商標権侵害に該当すること(商標、商品の類否など)を記載します。その上で、商標権侵害の停止、すなわち使用中止を求めるという流れになります(弁護士であれば要件事実を意識した書き方になっていることが多いです。)。

また、警告の段階では相手方がどの程度商標権侵害品を販売しているのか把握できていないケースもありますので、相手方に対して、販売数量、販売価格、販売先、仕入数量、仕入価格、仕入先などを開示するよう要請するケースも多いかと思います。これにより損害額を算定し、必要に応じて、次回のやりとり以降で損害賠償の話を進めるということになります。また、仕入先や販売先の開示を受けることで、商標権侵害品の流通ルートを解明することができ、商品流通の上流側の商標権侵害者に対して、さらなるアクションを取ることが可能となり、商標権侵害物品の根絶を図ります。警告書の最後の部分には、相手方の対応次第では法的手続や刑事告訴などを取る可能性がある旨の文言を入れることが多いです。

警告書送付後

実際、商標権侵害の警告書を送付することにより、相手方がすんなり商標権侵害行為を停止すれば、第一義的な目的は達せられるのですが、無視されるケースもありますし反論されることもあります。無視された場合には、会社名で警告していたのであれば、次は弁護士名義で再度、警告するのか、また、弁護士に依頼して商標権侵害差止の仮処分、差止や損害賠償請求の本訴を提起するのかなど、法的手続に移行するかを検討することになります。

警告は無視はされている(返信がない)けれども、商標権侵害行為だけは停止(記述の削除等)してくるケースも見受けられます。また商標権を侵害しないものであると反論された場合(これは警告前からおよそ予想できているはずです。)は再度、商標権侵害である理由を詳細に述べ反論するということがよく行われています。それでも、互いに納得できなければ、やむなく法的手続に進むということになります。法的手続へ移行する場合、相応の弁護士費用も発生し、時間と労力もかかりますので、費用対効果は勿論、あらゆる状況を総合判断して決定します。

弁護士名義の商標権侵害警告

自社名義の警告では無視されていたものが、弁護士名義の商標権侵害の警告をした途端に、相手方が商標の使用を中止し、商標権侵害の問題が解決することも多々あることは事実です。また、自分で警告する場合、法的な観点をあまり考えず、商標権を持っているから使用を中止しろ、との警告がなされるケースもありますが、本当に商標権侵害に該当するかは十分に検討する必要があります。商標権侵害に該当するかは、主に商標の類否、商品役務の類否が問題となり、その他相手方にその使用につき正当理由がないことが必要となりますので、商標に詳しい弁護士を交えて検討することが重要です。そのため最初から弁護士名義で警告するということもよく行われています。弁護士による警告により解決すれば、商標権侵害訴訟を提起することがなくなり、時間や費用の点で有効な手段となります。

ただ、稀に自ら使用意思がないにもかかわらず金銭獲得を目的とした商標権侵害の権利行使を弁護士に依頼してくるケースも見受けられます。他人の少し有名な商標を、その他人が商標を取得していないことをよいことに、勝手に取得した上で、その他人に対して、権利行使しようとする例です。私の場合には、なぜその商標を取得したのか、また相手方との関係などもヒアリングし、また、こちらでも独自に調べた上で相談に臨みますので、不当な目的での弁護士を利用した権利行使はお断りしております。商標法上、権利者であれば、たとえ使用していなくても勿論権利行使ができるわけですが、明らかに使用意思がないもの、権利の濫用となるものについては弁護士として助力することはできません。確かに弁護士名義での商標権侵害の警告は、自社名義の警告よりも相手に対して与える力は大きいです。それ故、私は権利行使に対しては常に慎重に考えております。勿論正当な権利行使であり、弁護士による権利行使をすべきという事案であれば、ためらわず弁護士名義で警告しています。

取引先への警告

注意! 取引先への警告

商標権者からのご相談においてよくあるのが、直接侵害している相手方ではなく、その取引先に対して商標権侵害の警告をしたいとの話です。同業他社の新規売り込みにより自社のシェアを奪われているようなケースで、自社のシェア(既存顧客)を守る意味でも、売り込みをかけられている顧客に対して注意を促したいという趣旨がほとんどです。これは特に注意が必要であり、基本的にはやめておいたほうが無難です。後で裁判になり商標権侵害行為が認められなかったような場合、競争関係にある者について虚偽の事実を告知したことになり、それにより信用が害されるという評価がされ、当該行為は不正競争行為となります(不正競争防止法2条1項14号)。不正競争行為と認められると差止、損害賠償請求、場合によっては信用回復措置(謝罪広告など)を受けるおそれもあります。また、商標権侵害訴訟においては反訴請求という形で相手方に武器を与えることになってしまいます。

商標権侵害となるか否かについては、最終的に裁判所で判断されることになり、勝てると思っていても途中で風向きが変わり敗訴する可能性もあります。こちらが損害賠償請求されるリスクを負ってまで警告することはおすすめできません。このようなことを逆にされている事業者の方もいらっしゃることかと思います。商標権侵害していないと判断されれば、すぐにやめるよう警告、法的措置を取るなどの対応が必要となります。

取引先への警告含め何らかの連絡文書を入れる場合には十分に注意が必要です。

商標権侵害訴訟

商標権侵害の警告をしても使用を停止しないような場合、商標権を侵害している者に対して、その侵害の停止を求めて裁判所へ提訴することが可能です。また、故意又は過失があれば、損害賠償請求の対象となりますので、こちらも請求することができます。なお、過失については商標法上推定規定があり通常認められますので、民事訴訟では、商標権侵害の差止請求と損害賠償請求がセットとなっていることが普通です。

a0002_001014裁判所における知財訴訟は、東京や大阪の裁判所では、原則として侵害論と損害論のステージにわけられ、まず商標権侵害しているか否かが議論されます。侵害論終了後に心証開示がなされることも多いですので、この段階で和解ということもかなりの数あります。また、商標では、特異な論点として損害不発生の抗弁というものもあり、商標権侵害ではあるものの損害は発生せず損害賠償は認めないというケースもあります。業務上の信用を保護することを目的とするのが商標法ですから、業務上の信用が蓄積されていないものを使用されても損害がないということです。その他、特許事件等とは異なり権利の濫用の抗弁が出され、それが認められるケースもよくあります。商標の使用意思に疑義があるようなケースや取得の経緯、それまでの当事者間の関係などから権利を行使することが結論として認めるべきでないような場合、権利の濫用が成立しています。

第一審が終われば負けたほうが控訴できますし、相手方から控訴があれば附帯控訴も可能となっております。裁判では、三審制といって地裁、高裁、最高裁と三段階からなりますが事実上二審(控訴審)で終了です。最高裁への上告はハードルが高く、簡単には認められません。したがって、訴訟になった場合は、最高裁でひっくり返る可能性が低いという意味で二審の判断というのは最終判断に近いと考えたほうがよいと思います。これは商標権侵害に限ったものではなく民事訴訟一般にも妥当する話です。 

ちなみに、特許権侵害訴訟とは異なり、商標権侵害訴訟の場合には、普段知財をあまり扱わない弁護士が代理人弁護士となっているケースもよくあり、この場合、商標法の理解に乏しく、また知財特有の主張やルールが理解できず、何度も裁判所から釈明を受け期日が空転する場合も見受けられます。知財特有の主張やルールを理解している商標や特許を扱う知財弁護士が相手方代理人になると進行はスムーズになるといった印象を私は持っています。商標権侵害訴訟については、費用対効果、勝訴による回収可能性、敗訴のリスクを常に考え対応する必要があり、どの段階で事件を終了させるのがよいか(訴訟前和解、訴訟途中で和解、判決による決着)、ケースバイケースで非常に難しい問題です。時間と共に状況も変化しますのでこ相談を重ねて決めていくことになります。

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