海外で事業を展開する場合又はその予定がある場合には海外への商標出願も必要となります。属地主義の下、商標権は各国ごとに成立し各国法制にしたがってその権利の内容も異なります。したがって、いくら国内で商標権を持っていたとしても、海外で事業を行った場合、その権利は海外においては行使することはできません。

 最近では、国内で有名なブランドを築いている企業・団体が海外で出願をしていないことに目をつけてアジアを中心とした海外で商標を先取り出願し、それを高値で売りつけようとする第三者も増えています。しかし、海外で一度先に取られてしまった商標を取り返すには現状では極めて困難です。それ故、海外進出する場合には、事業を守るためにも、その国でも商標を取得しておくことをお勧めします。

 海外への商標の出願については、出願する国の数や出願する国によって取得ルートが異なります。従前は、出願国の数に限らず、個別の国ごと(各国特許庁)に直接出願することが多く(いわゆるパリルート)、費用もかさんでおりましたがマドリッド協定議定書(マドリッドプロトコル)に我が国が加入してからは国際出願が可能となり、多数の国へ簡易かつ低額で登録することが可能となりました(マドリッドプロトコルによる国際登録出願については後述します。)。

 但し、少数の国に出願を検討している場合には、従前どおり個別の国ごとに出願するほうが費用面において低額で済む場合もあります。また、最近ではマドリッド協定議定書に加入する国が増えてきておりますが、未だに未加盟の国もありますので、そういった国へは直接出願するほかありません。

 弊所では、弁護士と弁理士が一緒になって、海外商標登録出願業務を受任しております。海外での商標取得をご希望の企業様は、「お問い合わせフォーム」から、弊所弁護士までご連絡お願い致します。

各国への直接出願

各国別に直接出願する方法とは、保護を求める国毎にその国の現地代理人を通じて各国特許庁に直接出願することをいいます。

 その際、パリ同盟国である我が国において既に出願されている場合、当該出願日から6ヶ月以内であれば、同出願を基礎としてパリ条約等に基づく優先権を主張することができ、優先権が認められれば我が国出願日が第2国(外国出願)の出願日として扱われる他、審査等の際にも我が国出願日が基準となります。

 但し、上記の方法は、各国毎に手続が必要となり、出願の対象国が多くなればなるほど、多額の費用がかかってしまいますので、少数国に出願または後述のマドリッド協定議定書に加盟していない国に出願する場合に用いられます。

マドリッド協定議定書に基づく国際登録出願

  マドリッド協定議定書(マドリッド・プロトコル)に基づく国際登録出願(「マドプロ出願」と言われています)とは、我が国における出願又は登録を基礎として、保護を求める締約国を指定し、我が国特許庁を通じて、国際事務局(WIPO)に国際登録出願をすることをいいます。

 マドプロ出願は、国際事務局において国際登録されることにより、国際登録日から指定国の官庁に直接出願されていた場合と同一の効果が発生します。つまり、各国特許庁に出願する必要はなく、国際事務局に対して願書を提出すれば良いということです。また、一定期間内に拒絶の通報がなされなかった場合には、当該指定国においてはそのまま登録されるため、現地代理人費用が不要となり、各国に直接出願するよりも費用が安価で済むというメリットがあります。その他、更新や名義変更等の多くの手続についても各国毎にする必要はなく、国際事務局に対して行えば済むため手続が一元化されているとともに、登録後にも一括管理ができるという利点もあります。

 もっとも、基礎出願又は基礎登録が拒絶又は無効となった場合には、国際登録も取り消されてしまうというデメリットもあります。また、前述の通りマドプロ出願では、我が国における基礎出願または基礎登録が存在することが必要であり(基礎出願は最終的に登録される必要があります)、国際登録する商標は、基礎出願又は基礎登録と同一であることも求められます。なお、マドプロ出願以外にも、出願対象国にEU加盟国が多い場合には、EUTM出願という制度を利用するのも一つの方法です。