商標審判・取消訴訟

  商標法上に規定された審判制度及びその関連制度としては、拒絶査定に対する不服審判、商標異議申立、無効審判、不使用や不正使用に関する取消審判があります。審判は民事訴訟でいうところの第一審に該当するものであり、いずれも弁理士であっても弁護士であっても請求することができ、それぞれ使い道が当然異なります。また、審判結果に不服がある場合には後述するとおり審決取消を求めて提訴することも可能です。以下、概略をご説明させていただきます。

拒絶査定不服審判

a0002_000849 審査で拒絶理由が出て反論したが、結局拒絶査定となり、その査定に不服があれば、拒絶査定謄本送達日から3か月以内であれば拒絶査定不服審判を提起することができます。拒絶査定不服審判は、他の審判のハードルの高さに比較すれば請求自体ハードルが低いと思われます(おそらく書面審理であるという点、当事者対立構造ではないという点が影響しているのだと思います。)。拒絶査定不服審判を請求し、不服の点に理由があれば登録査定となります。特に商標の類否については審査と審判の結論に乖離があり、審判請求によって結論が逆転するケースが多いように感じます(審査と審判では取引実情の考慮の度合いが異なっていると感じます。)。なお、出願人の適正手続担保のため、審判において新たな拒絶理由が発見された場合は拒絶理由が通知され、また、新たな証拠を職権で発見されれば審尋が行われます。

無効審判と商標異議申立

 無効審判とは、簡単にいうと商標権の登録を無効にする審判をいい、権利者と利害関係のある者が提起をすることができる審判です。無効理由については私益的な理由、公益的な理由いずれもあり、無効理由に該当し無効審判で権利が無効と判断されると商標権は遡及消滅します。また、無効審判は、商標権の登録後であれば、消滅後でもいつでもできる審判です。但し、一定の無効理由については登録後5年が経過すると請求できません。紛争となって場合には、この5年の除斥期間が過ぎていると3条の無効理由などが主張することができなくなり、結構痛いです。一方、商標の異議申立とは、商標権の設定登録後(公報発行から2か月以内)に商標権を取り消すことができる制度で、こちらは誰でも申立てを行うことができます。異議制度は、特許庁が自らの処分の適否を再度審理しその是正を図るもので、公益的な理由から設けられており無効審判とは趣旨が異なります。無効理由と異議理由はかなり重複しております。もっとも、異議申立は当事者系の審判ではないため、当事者が関係する異議理由については主張するのはあまり得策ではありません(十分な反論の機会がないため)。

 無効審判と異議申立は、請求人側が勝つと原則として権利自体が初めから存在しなくなってしまうという点では同じですが、時期的要件の違い以外にもそれぞれ審理等に特徴がありますので、いかなる理由で行うのかという点も加味し、最終的にどちらを利用するのかを決定することになります。

不使用(不正使用)取消審判

 不使用取消審判については権利者側に使用の立証責任があり、審判請求され、権利者側が答弁しなければ取り消されることになります。実際には不使用商標というのは沢山あり、答弁なしで審決に至っている例が多数を占めています。不使用取消審判は、特に自らの出願と類似する先願登録商標をつぶすという意味で有益なものですが、不使用取消審判をいきなり請求するのか、交渉するのかという点は悩ましいところがあります。また、最近は争いのある事件では不使用取消審判等でも口頭審理が行われております。口頭審理は、即答が求められることも多く、裁判所における弁論準備手続における書面の交換とは違いかなり緊張感があります。一方、不正使用取消審判については、いくつかの審判制度が準備されていますが、請求される数が少なく、侵害絡みの事件や権利濫用に関連する事件などで請求される程度です。この不正使用取消審判については、複雑な事実認定とその評価がポイントとなりいわゆる民事訴訟に近いものがありますので、民事訴訟を通常代理している弁護士が代理することが好ましいとも思われます。

 

商標に関する審決取消訴訟

 特許庁で行われた審判等について、審判官の判断に誤りがあると考えれば、その取消を求めて出訴(審決取消訴訟)することができます。具体的には、拒絶査定不服審判、無効審判、不使用や不正使用取消審判の審決や、異議申立の取消決定に対して不服申立が可能であり、一審は省略され、知財高裁という二審からスタートします。

 審決取消訴訟で争うのはあくまで審決が誤っているか否かという点ですので、どの点がどのように誤っているのか整理したうえで具体的に主張する必要があります。抽象的に主張されている例も散見されますが、誤っている審決部分を具体的に適示した上で、その点の誤りがどのように結論に影響を及ぼすのかという点を主張していく必要があります(民事訴訟の控訴審に似た構造です)。

 通常、訴訟については弁護士代理が原則であり、弁理士が単独で代理することはできませんが、審決取消訴訟については、弁理士であっても単独代理することができます。もっとも、訴訟手続を遂行するには民事訴訟法を十分に理解しておく必要があり、また、審決取消訴訟は行政事件ですので行政事件訴訟法なども理解しておく必要があります。

ページトップへ