商標の類否において、判断が迷うのが結合商標の捉え方です。従前より類否に関するいくつか最高裁判例が出ておりましたが、審査段階における結合商標の類否判断について、最高裁(第二小 平成19年(行ヒ)223号 審決取消請求事件)が一応規範を示しました。その後、侵害訴訟においても同様の基準が使われていることから、審査であっても侵害訴訟の場面であっても基本的には同じです。具体的には、下記のとおりです。

法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁第二小平成19年(行ヒ)223号 審決取消請求事件)

 この判示から明らかなように、結合商標であっても商標全体を観察するのが原則であり、例外的に構成部分の一部を抽出して判断することができる場合があると述べています。例外的要件としては、①一つの構成部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合、②他の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合、であるとされました。といっても、①ある部分が強く支配的な印象を与えるのか、②他の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められるか否かというのは、商標の構成は勿論、使用態様、取引実情等を事実認定した上で評価されるものであり、結局ケースバイケースとなります。

 商標権侵害訴訟の裁判においても、いかなる事実が認定できるのか、また、それをどのように評価するのかという点が争いになり、商標権侵害訴訟における弁護士による主張立証活動の大きなところとなります。なお、この最高裁のケースでは、「つつみのおひなっこや」という商標について「つつみ」部分だけを抜き出して評価できるか否かが争われて、抜き出して評価することはできないという判断になっています。