JAS商標事件(不使用取消)

平成 25年 (行ケ) 10294号 10295号審決取消請求事件

(平成27年1月29日知的財産高等裁判所)

事案の概要と争点

 本事件は、日本航空と経営統合された日本エアシステムが保有していた商標「JAS」について、日本航空が3年以上不使用であることを理由に、第三者が取消審判を求めたものであり、特許庁は審判請求を棄却しました(すなわち、日本航空が使用していることを証明)。それに対して、審判請求人がそれを不服として、取消訴訟を提起したという事案。

 色々な主張がありましたが、ここで取り上げるのは、2条3項3号、4号の「その提供を受ける者の利用に供する物」の意味、5号の「展示」の意味です。日本航空は、JAS商標について、コンテナに付されており、当該コンテナを用いて役務提供していたとして、コンテナが「その提供を受ける物の利用に供する物」にあたると述べ、他方、審判請求人(本訴原告)は、「その提供を受ける物の利用に供する物」とは、需要者が利用する者と解釈すべきであり、コンテナは、役務提供を受ける需要者が直接利用するものでないから、「その提供を受ける者の利用い供する物」に該当しないと述べました。また、2条3項5号の「展示」についても、視認可能なことが一時的で足りるか、恒常的である必要があるか等が争われました。結果としては、審決に誤りがなく請求棄却です。

判決内容とコメント

 判決は、2条3項3号、4号の「その提供を受ける者の利用に供する物」については、

 3号及び4号該当性について被告は,業として航空運送事業を行うものであるところ,・・・被告が要証期間内に,その運航する航空機による荷物の輸送に,本件使用商標1又は2の表示された貨物空輸用コンテナを使用したことが認められる。貨物空輸用コンテナは,被告が「航空機による輸送」の役務を提供するに当たり,その役務の提供を受ける者である航空機の乗客や貨物代理店から預かった荷物を入れるために利用するものであるから,被告が役務を提供するに当たり「その提供を受ける者の利用に供する物」に該当するものと認められる。」

 と述べ、コンテナが「その提供を受ける者の利用に供する物」に該当するとしました。この点について、原告は、

ア 原告は,商標法2条3項3号及び4号にいう「その提供を受ける者の利用に供する物」とは,「需要者が利用する物」のことを意味するものと解すべきであるが,本件使用行為1ないし3で使用される貨物空輸用コンテナは「需要者が利用する物」ではないから,同項3号及び4号の「その提 供を受ける者の利用に供する物」には該当しない旨主張する。」

と述べましたが、

「しかしながら,同項3号及び4号が,役務の提供に当たり「その提供を 受ける者の利用に供する物」と規定し,「その提供を受ける者が利用する物」とは規定していないことに照らせば,標章が付される対象物は,役務を提供する者が,その役務を提供するに当たり,その役務の提供を受ける者(需要者)の利用に供する物であればよく,需要者が直接に利用する物に限られないというべきである。そもそも,3号は「標章を付する行為」をすれば,実際に役務の提供に当たって用いられるか否かに関わらず,直ちに商標の「使用」に該当するとするものであるから,標章を付する物が需要者が直接に利用する物に限られるとする必然性はない。また,同項5号は,「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」を含むが,これに限られない「役務の提供の用に供する物」について規定するものであって,かかる規定が存するからといって,同項3 号及び4号において,標章を付する物は需要者が直接に利用する物に限られるとする必然性もない。」

とし原告主張を排斥しました。文言上、「供する物」と規定されていることを第一の理由にしています。また、3号や5号の規定との関係でも矛盾しないとされました。文言からの理由づけは強く個人的には妥当な解釈かと思います。続いて5号についても原告の主張を排斥しています。

イ 原告は,商標法2条3項5号の「展示」とは,役務の提供の用に供する物を「店頭又は店内等に並べていわゆる客待ちにある状態」を意味するが, 本件使用行為1ないし3において,本件使用商標1又は2の付されたコン テナは,需要者(荷物を預けた者)の目に触れないか,又は目に触れたとしても一時的なものにすぎず,「店頭や店内等に並べていわゆる客待ちにある状態」にはないから,コンテナが「展示」されたとはいえない旨主張する。

 しかしながら,商標法2条3項5号の「役務の提供のために展示する行為」とは,役務の提供のために一般に示す行為を意味するものと解され,原告が主張するような「店頭又は店内等に並べていわゆる客待ちにある状態」のみに限られないというべきである。そして,本件使用行為1ないし3において,被告が「航空機による輸送」の役務の提供に使用する貨物空輸用コンテナは,空港内で,車両に牽引されて移動し,若しくは機体に搬入又は機体から搬出される過程で,同役務の取引者・需要者である航空機の乗客や貨物代理店の従業者により,本件使用商標1又は2の表示を含め視認することが可能な状態に置かれていたから,被告は,貨物空輸用コンテナに本件使用商標1又は2を表示したものを,「航空機による輸送」の「役務の提供のために展示」したものと認められる・・・」

5号の展示は、一般に示す行為であればよく、換言すれば、視認することが可能な状態に置かれていることで足りるとしました。客待ちにある状態というのはよくわかりませんが、要するに原告の主張は、役務提供に際して、恒常的に視認可能である必要があると述べたものと思われますが、ここまで文言を限定解釈する理由は見当たらないかと思われます。この5号を弁理士試験等で勉強する際、喫茶店でのコーヒーサイフォンの例がよく挙げられますので、そこからイメージさせたのだと思いますが。今回の件は、他の主張も読みましたが、これを請求認容までもっていくのはなかなかハードルが高い事件だなと感じました。

 

 

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