Coleman商標事件(4条1項11号の取引実情)

平成 27年 (行ケ) 10193号等 審決取消請求事件

(平成28年3月16日知的財産高等裁判所)

事案の概要と争点

 本件は、原告がキャンプ用品を「Coleman」ブランドで製造販売する会社による拒絶査定不服審判に対する審決取消訴訟であり、4条1項11号該当性が争われた事案である。出願商標は「Coleman」の文字を含む商標であり、引用商標は片仮名「コールマン」であり、指定商品は時計に関するものであった。通常の実務感覚でいえば、称呼が同一であり観念も著しく相違するものではないため、外観に違いがあれど、類似と判断される事案です。もっとも、原告の「Coleman」がキャンプ用品等において著名なブランドであり、また、引用商標も原告以外の会社で時計に使用されているという事情等があったため、原告は、これら事情を踏まえれば観念が大きく相違し、両商標は非類似である等として特許庁の判断を争いました。

 

判決内容とコメント

 今回の結果は、称呼、観念が同一であるから全体として類似であり、4条1項11号に該当するという特許庁の判断を維持しました。裁判所では、観念について出願商標、引用商標いずれからも原告ブランドが想起されると認定しました。引用商標は片仮名「コールマン」であり時計の分野でいかなる観念が生じるのか、という点については当事者がいずれも明確に主張していない引用商標「原告ブランド」が想起されると判断しました。この点については、原告における使用や検索エンジンの検索結果が重視されています。

「コールマンジャパンが作成した商品カタログのいずれにも,「コールマン」を含む記載が多数存在し,また,原告の時計を紹介するインターネットサイト及び原告の時計に関するブログにおいても,「コールマン」を含む記載が複数存在しており,上記ブログにおいては,「コールマン」を含む記載のうち,英語表記の「COLEMAN」と併用されていないものも,かなりある(甲5)。さらに,インターネットの検索エンジンにおいて片仮名表記の「コールマン」を検索すると,いずれの検索結果においても原告に関する内容が冒頭に示される。以上によれば,引用商標の「コールマン」からは,英語表記の「COLEMAN」と併用されていない場合であっても,原告のブランドとの観念も生じるということができる。」

  また、4条1項11号における取引実情の考慮については、これまでの裁判例と同様に一般的、恒常的な事情のみ考慮可能であると述べております。

「原告は,本願商標及びリズム時計による引用商標の使用状況からも,出所混同のおそれはないものということができ,現に,原告又はコールマンジャパンに対して出所混同に関する苦情は寄せられていない旨主張する。しかし,商標法4条1項11号に係る商標の類否は,商標の登録の可否に関わる要件であるから,上記類否を判断する際に考慮すべき取引の実情は,特定の商品等に関わる個別的な事情や,一時的な事情ではなく,当該指定商品全般についての一般的,恒常的な取引の実情であると解すべきであるところ,原告の主張に係る本願商標及びリズム時計による引用商標の使用状況は,これに当たらない。」

  取引実情として、個別的か一般的か、一時的か恒常的か、という境界がなんとなく垣間見れる事案であったかと思います。裁判所は観念の認定において取引実情として、原告商標の著名性からくる出願商標の意味するところ、また「コールマン」という文字の一般の認識等を、原告による使用状況、検索エンジンでの検索結果も含め考慮しています。これらは、原告や引用商標の権利者らによる商標の使用状況が変われば変化し得るものですので、必ずしも恒常的とまでは言えない気もします。あくまで原告による出願商標の使用、また、引用商標の権利者による引用商標の使用状況という視点で捉えず、文字自体の持つ意味を客観的に捉えているから、一般的かつ恒常的でないにしても一時的なものとはいえないとしていると思われます。他方、引用商標が権利者によってどのように使用されているのか、より具体的には、引用商標が「コールマン」そのものの表記では権利者が使用していないという点等は個別的な事情であり、恒常的とは言えないため、考慮されませんでした。 

 商標使用者側の視点にたって商標の使用状況を主張すると個別的となりがちですので、文字の意味の探求という客観的視点にたって、出願人や引用商標権利者の使用を織り交ぜながらあくまで全体としての使用の状況を主張しないと考慮されないということになるかと思います。主張の仕方は工夫しないといけないと思わされた事案でした。

 

 

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