Line/ライン商標事件(商標法50条の社会通念上同一)

平成 27年 (行ケ) 第10193号 審決取消請求事件

(平成28年3月16日知的財産高等裁判所)

事案の概要と争点

 本件は不使用取消審判の請求認容審決に対する審決取消訴訟です。本件では、商標法50条の社会通念上同一の範囲が問題となった事案であり、裁判所は各使用商標については登録商標と社会通念上同一ではないとして、審決判断を維持しました。それ故、本件の主な争点は商標法50条の社会通念上同一です(他の争点は割愛)。

判決内容とコメント

 登録商標、使用標章の使用態様は以下のとおりです(画像は本件判決から引用しています。)。

図1

 原告は、使用商標1中の「Rubotan」「LINE」「ルボタン」「ライン」の各文字が段を違えて表示されているから一体性が希薄化されていることや、「LINE」の方が「Rubotan」に比べて文字数が少なく大きく書体も異なること等から、「Rubotan」と「LINE」は分離観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しいないと述べ、外観上「LINE」の欧文字、「ライン」の片仮名文字が顕著な印象を与え要部になるとし社会通念上同一であると主張しました。それに対して裁判所は、本件使用商標1を五段の標章であることを認定した上で、

「上段二段の「Rubotan」及び「LINE」の欧文字は,下段三段の「LIQUID」,「ルボタン」及び「ライン」よりも文字が大きいこと,「LIQUID」の下部の「ルボタン」及び「ライン」の片仮名文字は,同じ大きさ,同じ書体でまとまりよく併記されていることからすると,「ルボタン」及び「ライン」の片仮名文字は,「Rubotan」及び「LINE」の欧文字の表音を示したものとして,本件使用商標①から「ルボタンライン」の称呼が自然に生じるものと認められる。「LIQUID」の欧文字は,「液状」の意味を有し,本件使用商品が液状であることを表示したものと理解することができ,しかも,上段二段の「Rubotan」及び「LINE」の欧文字よりも文字が小さいことからすると,出所識別標識としての機能は弱いものといえる。一方で,「Rubotan」の欧文字と「LINE」の欧文字は,上下2段にまとまりよく併記されており,「Rubotan」の欧文字は筆書き風の書体であり,「LINE」の欧文字は「Rubotan」の欧文字よりもやや文字が大きいが,「Rubotan」の欧文字はゴシック体の「LINE」の欧文字とは異なる筆書き風の書体であることからすると,外観上,いずれかが顕著に際立っているということはできない。」

と構成面から使用商標を検討し、五段表記のうち下段の二段が上段の二段の仮名表記であり、中段「LIQUID」の欧文字は識別力が弱く、冗談の二段は下段3段の文字より大きく、かつ上段二段の「LINE」「Rubotan」の各文字がまとまりよく併記され、書体や文字の大きさは多少異なるものの外観上いずれが顕著に際立っているとは言えないとしました。その上で、さらに

「加えて,本件使用商品は,販売名を「ルボタン ライン」とする「アイライナー」であり(前記(1)),本件使用商品の宣伝広告においては,本件商品の画像とともに「ルボタンライン」,「ルボタンライン リキッドアイライナー」,「ルボタンアイライナー」などと表記され(甲22ないし27),本件証拠上,本件使用商品について,「LINE」の部分のみをその出所の識別標識として使用していた事情は認められない。」

と原告の他の関連する使用において「ルボタン」と「ライン」を分離して使用していない点を参酌し、

「以上を総合すると,本件使用商標①の構成中の「Rubotan」及び「LINE」の欧文字は,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではないが,需要者,取引者においては,ひとまとまりの表示として認識するものと認められるから,「LINE」の欧文字部分が独立して自他商品識別標識として機能し得るものということはできない。」

と述べ、使用標章1は不可分的に結合してはいないものの、ひとまとまりで認識されるものであるとして、「LINE」部分が単独で自他商品識別機能を発揮するとの原告主張を排斥しました。さらに原告は、業界事情として書体、大きさ、段等を異にする2以上の要素からなる商標はそれぞれの要素毎に使用するという実情も主張しましたが、この点についても、要部の認定は、需要者や取引者の認識等を前提に個別的に検討すべき問題であるとして取り合いませんでした。また、裁判所は、使用商標2についても、本件使用商品が「ルボタン ライン」であり、「ルボタンライン」等として宣伝広告されていたことから、「LINE」の部分のみをその出所の識別標識として使用していた事情が認められない点、さらには本件包装用箱が本件使用商品を6個梱包するための包装用容器である点等から、本件包装用箱に接した需要者・取引者は「ルボタン」及びライン」の片仮名文字をひとまとまりの標章として認識するとし、「ライン」の片仮名文字のみが独立して自他商品識別標識として機能し得るものということはできないとしました。

 社会通念上同一か否かについては、類否判断の際に用いられるのと同様に、使用商標の要部がどの点にあるのかという点が慎重に検討され、要部認定は結合商標の対比対象の認定に似たところがあります。分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているか否かを検討し、そうでなかった場合でも需要者や取引者が一体として認識する範囲がどこまでなのかを商標全体の構成や個別の構成要素の意味、その他の事情(商標の他の使用態様)等から明らかにしていっており、参考になる裁判例です。

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