商標権侵害の損害賠償

 商標権侵害を故意又は過失によって行うと、不法行為に該当し損害賠償責任を負うことになります。損害賠償請求は、通常民法709条に基づいて行うものであり、請求する側(商標権者)は、商標権侵害訴訟において、故意過失、商標権侵害事実、損害発生、損害額、因果関係の主張立証が必要となりますが、商標権侵害等の無体財産権侵害やその損害の立証が困難なため、商標法中にも各種の立証軽減規定が設けられています。

a0001_008437 具体的には、たとえば、商標法には、過失の推定規定があり、商標権侵害した者については通常は商標を使用する前に商標登録されているか否かを調べる義務があるとして、原則として過失が推定され、過失がなかったことを商標権侵害者側が主張立証する必要があります。弁護士や弁理士による商標権非侵害の鑑定書等の作成していた場合であっても過失があった点の推定が覆らないのが通常ですので、この点ではなかなか争えません。また、商標権侵害による損害の額というのは、非常に算定が困難なため、損害額の立証責任軽減規定などがあり、相手方の売上や利益から算定できるような規定もあります。他方で、商標権侵害者側が損害発生していないことを立証すれば(損害不発生の抗弁)、損害賠償請求を負わないケースもあります。このあたりは民法の特則として規定されており複雑ですので、具体的な点は弁護士へ相談されたほうがよいかと思います。

 損害額の算定方法についてはさらに以下で説明させていただきます。

商標権侵害の損害額の算定

 商標権は無体財産権であり、商標権侵害された場合の損害額がいくらとなるのかについては立証が難しいため、商標法上、損害額の立証を容易化する規定(商標法38条等)があります。具体的には以下の計算が用意されています。商標権侵害訴訟において損害論が展開される場合には、それぞれの規定の立証可能性、計算される額などを考慮した上で弁護士が主張していくことになります。

①侵害者の譲渡した数量×権利者側の商品の単位数量当たりの利益の額

 本来、商標権侵害者が侵害品を販売しなければ、商標権者はそれだけの数(侵害者が販売した数量)を販売でき、商標権者独自の利益(権利者側の単位数量当たりの利益)を得ていたはずであるという前提で計算されます。もっとも、譲渡した数量を商標権者側が販売することができなかった事情や、商標権者側に販売能力がなかった場合には、その分が控除されます。

②侵害者が得た利益額

 商標権侵害者が得た利益は、本来商標権者側が販売できたものとして、その利益分をうすなったということで、侵害者側の利益が商標権者の損害であると推定するものです。

③使用料相当額

 商標権者が登録商標を第三者にライセンスしていれば、普通に得られた額を商標権者の損害とする規定です。指定商品や役務等、その分野により異なりますが、商標権侵害者が侵害品を販売することによって得た売上に対して、一定の割合(3~7%程度)を乗じた額で計算されます。

④相当な損害額

 商標権侵害の損害立証のための必要な事実の立証が事実の性質上極めて困難な場合には、裁判所が相当な損害額を認定できるとするものです。

  上記のうち、①や②については、実際にはさらに商標の寄与率という点が考慮されます。たとえば、②においては、商標権侵害者の利益が商標権者側の損害と推定されるものの、商標権侵害者側で、商標権が寄与した割合分しか損害とはならないとの抗弁を主張することが多く行われています。利益を上げるには、商標を利用しただけでなく営業努力等も含まれるからです。この点については、各種裁判で争われている点であり事例によって異なりますので、弁護士へ相談されたほうがよいかと思います。

 また、上記の商標法の規定を使うのではなく、民法709条に基づいて商標権侵害の損害を立証してもかまいません。なお、特許の場合には、実施料相当額という損害が常に発生しますが、商標の場合には、使用料相当額の損害が発生しないということもあります。商標は特許のような創作すること自体に価値があるものではなく選択物であるため、商標それ自体に価値がない場合があるからです、商標の価値というのは、商標を使用することにより、その商標に業務上の信用が化体することにより発生します。このような場合には、商標権侵害者側が、商標権者には損害が発生していない旨を抗弁として主張することになります(損害不発生の抗弁)。この損害不発生の抗弁については、商標の周知著名度、使用状況、侵害者側の使用標章との関係などを踏まえて、判断されることになります

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