商品の標識に関する商標法と不正競争防止法はどういう関係にあるのか?

知的財産関連の法律として、商標法を補完するような法律として不正競争防止法というのがあります。商標法と不正競争防止法とは密接に関連しています。

商標法と不正競争防止法の重畳請求

たとえば、商標権侵害の警告と併せて不正競争防止法に基づく請求(2条1項1号の周知表示混同惹起、2号の著名表示冒用の各不正競争行為)が付加されていることや、場合によっては、商標権侵害ではなく不正競争防止法に基づく請求のみが内容証明に記載されていることがあります。不正競争防止法2条1項1号又は2号に基づく場合は、商標法とは異なり、商標を登録していることは要件ではありませんが周知性や著名性が要求されます。商標が登録されていれば、その商標が有名であること(周知性著名性)は要求されませんし、混同が生じるおそれがあるか否かも要件とはなりませんので、商標法で権利行使すればよいのではということになります。ただ、周知著名なことが明らかな商標のような場合には、商標法に基づくのではなくあえて不正競争防止法による請求のほうが好ましい場合もないとはいえません。たとえば、商標法に基づいて権利行使を行うと、当該登録商標に対して無効審判を請求してきたりして手間暇がかかりますが、不正競争防止法に基づく場合にはこのようなことが起こりません。

実際には、警告の段階ではいろいろな権利に侵害しているということを相手方に理解させるために、商標権侵害行為に該当し、かつ、不正競争防止法違反にも該当するとの重畳記載することは普通に行われています。実際に法的措置を取る場合には、商標の周知度などを勘案し、どちらがよいのか(もしくは両方で請求したほうがよいのか)ということを十分に検討した上で行うことになります。

商標と不正競争行為の対立

また、不正競争防止法に基づくケースとしてよくあるのが、元々共同で事業を行っていたがあるとき仲違いしたというシチュエーションでの権利行使です。仲違い後、相手方が勝手に商標登録したため(仲間割れする前に相手方に商標権が最初から帰属しているケースもあります。)、商標登録していない側は不正競争防止法に基づいて対抗するというようなケースです。権利者は商標法に基づく訴訟提起、他方訴えられた側は不正競争防止法に基づく反訴という形で裁判所に訴訟係属することがあります。その他、商標と不正競争防止法との関係でいえば、ドメインの不正取得、使用等との関係が問題となることもあります。ドメイン中に商標が含まれているケースでは商標に基づく権利行使のほかに不正競争防止法に基づく請求も可能となる場合もあります。その他13号も関連があるケースもあります。

さらに、よくあるのが商標権侵害の警告を直接相手方ではなく相手方の顧客に対して送った場合の不正競争防止法2条1項14号(虚偽事実の告知等)の適用です。虚偽の事実を告知等し、相手方の信用を害する行為をすれば不正競争行為となるものであり、典型的なケースは事後的にみれば商標権侵害でなかったにもかかわらず、警告段階で商標権侵害と第三者に対して触れ回っていた場合にはこの規定に該当します。商標権侵害訴訟を提起された場合、反訴として不正競争防止法2条1項14号で対抗するというのはよくある話です。商標権者へのアドバイスをすれば、第三者への警告は極力避けたほうが無難です。

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