商標法違反の捜査から判決までの流れ

GUM11_PH02058 商標法違反の捜査は、税関における水際措置、ブランド会社からの被害届、偽ブランドと疑われる商品を購入した方からの被害届提出、その他警察による独自の発見(サイバーパトロール等)などから開始されます。

 もっとも、自分が商標法違反の刑事事件の被疑者となっていることについては、裁判所発布の捜索差押令状や逮捕状をもった捜査機関が自宅や会社に現れることではじめて認識します。また、商標権侵害物品の輸入を理由とする関税法違反の捜査は税関による水際から開始されます。そのため、この段階で驚いて弁護士へ相談される方がほとんどです。私のところにも商標法違反容疑で捜索差押に来た日に弁護士へ相談したいとご連絡をいただくことが多いです。

 なお、商標権侵害の民事事件と商標法違反の刑事事件をごちゃごちゃにされている方もいますので、ここで一言申し上げると、刑事事件において商標法違反の罪で有罪となった場合でも、民事の商標権侵害に関する損害賠償請求を免れるわけでありません。刑事事件と民事事件は別であり、弁護士も刑事事件と民事事件は別事件として対応しています。また、民事事件で商標権侵害の損害賠償を支払ったとしても、商標法違反の刑事責任を免れるわけではありません。もっとも、損害賠償を果たすと被疑者側に有利な事情としては考慮されますので、商標法違反の刑事事件において起訴猶予となったり、刑が軽減されるという効果はあります。

 以下、商標法違反の刑事事件の捜査から公判(判決)までの大まかな流れを説明させていただきます。

商標法違反の捜査から起訴へ

 商標法違反の容疑があり、警察から商標法違反の捜索差押令状をもって自宅や職場にやってきて、それを示されれば、その場で捜索され、必要なもの(パソコン、スマートフォン、現物等)が押収された上で、近日中に呼び出しをする旨などが捜査機関から伝えられます。また、そのまま任意の取り調べを受け、商標法違反の罪を認める上申書を書かされることも多いです。

 一方、逮捕状であれば、衣服等を準備する時間をもらえたり、事前に弁護士に相談している場合、弁護士へ電話する時間をくれることもありますが、そのまま警察に連れて行かれます。この場合、警察署に車で入る際に、報道機関が来て写真や映像を撮られるケースもあります。

 また当日はとりあえず任意で出頭し、後日に商標法違反容疑の逮捕状が出るケースもあります。在宅事件、すなわち逮捕されずに進むのか、逮捕され身柄事件で進むのかはケースバイケースです。商標法違反といった経済犯罪であったとしても、近年の摘発強化等により逮捕されるケースもままあります。 

 在宅事件では、必要に応じて呼び出しがありますので呼び出されたら警察や検察に出向いて商標法違反の取り調べを受けることになります。なお、在宅捜査において弁護士を選任することが必須というわけではありません。なお、出頭拒否を繰り返せば逮捕されることにもなりますので無視はしてはいけません。都合が悪い場合には、日程を再度調整して必ず出頭だけはすべきです。在宅事件であっても警察からの呼び出し数回、検察からの呼び出し1回程度は通常あります。

 他方、身柄事件では最大23日間の勾留があり、連日取調べが続きます。具体的には、商標法違反で逮捕された後48時間以内に検察官に送致され、その後、検察官が24時間以内に勾留請求するか否かを決定し、裁判官に対して勾留請求し、それが認められると10日の勾留となります。この期間中、取調べが続くのですが、やむを得ない事情があれば、さらに最大10日間の勾留延長が認められます。なお、これらの期間中、身体拘束からの解放手続がいくつか用意されていますので、弁護士が選任されることが多く、選任された弁護士が身体拘束からの解放を目指します。なお、商標法違反の捜査は警察の生活安全課や保安課が対応しているケースが多いです。

  そして最終的に商標法違反で起訴するのか、不起訴又は起訴猶予とするのかが検察官の判断により決定されます。起訴するか否かは、商標法違反の犯行態様、結果、余罪、前科前歴、社会への影響、反省の程度、示談の有無など諸般の事情を総合的判断し決められます。警察による商標法違反の捜査と税関のよる関税法違反の捜査結果の両方を踏まえて、検察は正式に起訴するのか否かを決定します。不起訴または起訴猶予となると事件は終了し身柄事件では釈放されます。

 一方、起訴には、公判請求と略式命令請求の2種類があり、略式命令請求は一定額以下の罰金刑を求める場合に用いられる簡易な手続であり、この場合、公判は開かれず罰金刑の略式命令が出て(正式裁判となる場合もあります)、そこに記載された罰金を納付することで商標法違反事件は終了します。

 捜査機関が捜索差押令状を持ってきたことは商標法違反被疑事件が動き出している証拠ですので、早期に弁護士へ相談することが重要です。

略式手続(商標法違反)

 前述のとおり正式な公判請求するのではなく略式手続において商標法違反が終了する場合がありますので、その点、簡単に説明させていただきます。 

 検察官が簡易裁判所に起訴し、公開法廷での公判手続を経ることなく非公開で罰金等を科す刑事手続のことを略式手続(略式起訴)といいます。この略式手続に則って、裁判所は判決ではなく略式命令を下します。

 商標法違反で略式手続にするか、正式裁判手続(公判手続)にすべきかは、検察官の判断によるところですが、略式手続の場合には、100万円以下の罰金しか課すことができませんのでそれ以上の罰金刑が相当の場合や懲役刑が相当の場合、正式裁判に向けた起訴となります。通常、刑事裁判は、被告人の適正手続(国家による弾圧等から身を守る。)を担保するため、公開法廷において裁判を受ける権利が憲法上保障されていますが、略式手続は非公開手続となります。このように略式手続というのは例外的な制度ですので正式裁判を受けたいのであれば受ける権利は当然にあります。略式手続を望む場合には、書面にて異議がないことを明らかにしなければなりません。このあたりの話は弁護士へ相談することが必要です。

 商標法違反で略式手続となると、裁判所より略式命令を受け、正式公判手続(公開法廷で行われ弁護士による弁護が必須となるもの)になることなく、罰金を納付すれば事件は終了します。商標法違反事件で事案が軽微な場合、逮捕されても最終的に略式起訴となることもありますし、商標法違反の在宅事件でも略式起訴となることもよくあります。

 逮捕されているようなケースで弁護士として弁護人を引き受けている事件で略式起訴となるとそれで弁護士による弁護活動も終了となります。なお、ここで注意ですが、略式手続になったからといって必ずしも罰金刑となるわけではありません。裁判所において略式命令になじまないと考えれば、正式な公判手続へ移行することもあります。現に弁護士として私が関与した事件においてそのようなケースにも遭遇したこともありますのでご注意ください。

商標法違反の公判

 商標法違反により正式に起訴されることとなった場合、公開法廷にて裁判を受けることになります。在宅事件の場合には、指定された期日に裁判所に行くことになりますが、その前に弁護士(刑事事件では弁護人となる)との間で打ち合わせなどを行います。一方、起訴前に身柄事件となっている場合には、そのまま身体拘束が続きます。

 もっとも、起訴後には保釈請求が可能となりますので、保釈が認められれば一時的に身柄が解放されます。保釈が認められない場合には、留置場から直接裁判所へ行くことになります。いずれにせよ、自分についた弁護士(弁護人)から、商標法違反の正式裁判開始前に、今後どのような手続で裁判が進行するのか、法廷でどのように振る舞えばよいのか、法廷でどういう質問をするのか、されるか等、裁判を受けるにあたって沢山のアドバイスをもらう必要がありますす。正式に起訴されれば、被疑者という立場から被告人という立場になります。

 起訴後、1カ月程度した後、公開法廷で公判が開かれ、検察官、弁護士(弁護人)が出席の下、被告人の人物の確認の上、起訴された事実の確認、有罪とすべき証拠が提出され、罪を認めている事件であれば、主に弁護士が主導して情状証拠の提出、被告人質問が行われます。また、否認事件では、検察官側や弁護士側双方において証人尋問や物的証拠の提出手続等が行われることになります。商標法違反の検察官提出証拠は膨大な量であることがありますが、事前に弁護士がすべて目を通しています。その後、検察官意見(求刑意見等)や弁護士による弁護側意見を述べ、結審します。なお、商標法違反や関税法違反事件の否認事件では、偽ブランドか否かはおよそ客観的に明らかになりますので、偽ブランドであることを知っていたか、といういわゆる故意が問題となるケースが多いです。勿論、商標権侵害か否か、すなわち、商標が同一類似で商品役務が同一類似に該当するかという点も争われることもありますが、偽ブランド品の場合は酷似していますので(そうでないと売れない。)、ここは争点になりにくいところです。また、組織ぐるみの場合、共犯関係の成立の有無、各人の責任なども争点になることがあります。

 結審した次の期日において判決が出ます。判決では、商標法違反で有罪か無罪はもちろん、有罪の場合には懲役刑か罰金刑か、執行猶予がつくのか実刑となるのか、が裁判官によって決定されます。ある程度事前に刑の予想はつくのですが、執行猶予が付くか微妙な事案であれば、担当弁護士としても非常に緊張しますし、ご本人はなおさらそうです。勿論、有罪となれば控訴することもできます。判決が確定し、実刑であれば刑務所へ行きますし、執行猶予付きの判決であれば、ひとまずは刑務所へ行かずにすみますし、執行猶予付きや判決や罰金刑の場合には、控訴しなければ刑が確定し事件が終了します。

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